リウマチが難病といわれる理由
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慢性関節リウマチは「痛い病気」です。
ふだん、わたくしたちは虫歯一本うずいても、その苦痛のために憂鬱になり、一日中仕事も手につきません。
リウマチの場合にはこの痛みが一か所どころか何ヶ所からもおこり、しかも四六時中つづきます。
これでは、患者さんの気持ちがふさぎこまないほうが不思議です。
平成六年に厚生省リウマチ調査研究班は、リウマチ専門病院にかかっている慢性関節リウマチの患者さん約六五〇人を対象にアンケート調査を行いました。
それによると、リウマチの患者さんが「もっとよくなってほしい」と希望することの第一は、
「痛みがもっと軽くなってほしい」、
第二は、
「もっと歩けるようになりたい」、
でした。
慢性関節リウマチに関する苦しみのなかで、この二つの苦しみがほかのさまざまな苦しみを大きくひきはなしており、患者さんがもっとも強く改善を希望するものとなっています。
痛みは人の精神状態を暗くし、仕事や日常生活に積極的に取り組んでいこうとする意欲を抑えこんでしまいます。
「痛み」が慢性関節リウマチの患者さんの第一の苦しみであることはまちがいありません。
慢性関節リウマチの患者さんの第二の苦しみは「進行性の肢体不自由」です。
先ほどのアンケートの回答では、第二の希望がこれです。
一九九一年に米国カンサス大学リウマチ科主任教授のウオルフ博士が行った調査によれば、
慢性関節リウマチの患者さんの50%は初診から二年以内に中等度の、
六年以内に高度の、10年以内にきわめて高度の肢体不自由になってしまうといいます。
平成六年の厚生省リウマチ調査研究班の調査では、
リウマチの患者さんは発病五年で歩行能力の27%を、10年で34%を、20年で50%を失うという調査結果が得られています。
関節の動きが悪くなるにつれて、また侵される関節の数が増えるにつれて、日常生活上の不自由さはしだいに大きくなっていきます。
慢性関節リウマチの患者さんは、去年できたことが今年は困難になり、今年困難となったことは来年はできなくなります。
これは、下り一方通行のエスカレーターに乗っているようなものといえます。
「このままいくと、しまいには車いすや寝たきりの重度身障リウマチになってしまうのではないか」
という不安は、慢性関節リウマチの患者さんのだれもがいだくもっとも切実な不安といってよいでしょう。
慢性関節リウマチの患者さんの第三の苦しみは「精神的・社会的・経済的困難の増大」です。
肢体不自由の程度が増すにつれ、仕事や職業上の困難が増え、ついには仕事をやっていくことができなくなります。
前出のウオルフ博士の1990年の調査によると、
リウマチの患者さんは、病気になって10年で50%が、15年で70%弱が職を失うといいます。
また、1988年のカナダのサスカッチワン医大内科教授・ミッチェル博士の調査によれば、
慢性関節リウマチの患者さんの平均年収は、男性では健康な人の約4分の1、女性では約2分の1にすぎなかったそうです。
リウマチの患者さんは、掃除・洗濯などの家事がじゅうぶんにできなくなれば、お手伝いさんを雇わねばならず、元気なときには電卓で病院や職場に行けたのに、
からだが不自由になるとタクシーで通わなければならないなど、出費もかさむようになります。
米国ボストン大学内科教授・ミーナン博士の調査(1978年)では、
慢性関節リウマチの患者さんが病院に通って検査を受けたり薬局でくすりをもらったりするのに要する「直接医療費」は一般の患者さんの平均の3倍、
通院のための交通費やヘルパーを雇ったりするのに要する「間接医療費」は直接医療費の3〜5倍にもなるという調査結果が得られました。
「リウマチの患者さんの『生涯医療費』は脳卒中や心筋梗塞の患者さんの生涯医療費と同じ」という調査報告もあります。
いずれにしても、からだの不自由さが増すにつれて治療や療養に要する費用も増えていくわけで、
患者さんの経済的困難は病気の経過が長くなるほど大きくなっていくことになります。
さらにいえば、からだが不自由になると自力でできないことが多くなり、仕事や生活のため、まわりからの援助が必要になってきます。
すると、患者さんをとりまく家族の負担が増え、家族間の人間関係がストレスにさらされます。
ボストン大学のミーナン博士の調査(1981年)によれば、
病気にもとづく失職・転職・転居・離別・離婚など、職・住・家庭環境や家族構成の変化を、慢性関節リウマチの患者さんの63%が体験するといわれます。
このような進行性の肢体不自由と社会・経済的困難に加えて、療養の前途の希望に灯を見出しにくいとなれば、リウマチの患者さんの心情的・精神的苦痛の大きさは推して知るべしです。
慢性関節リウマチの患者さんの第四の苦しみは「生存余命の短縮」です。
カナダのサスカッチワン医大内科教授・ミッチェル博士の調査(1986年)では、慢性関節リウマチの患者さんの生存余命は一般人口の生存余命に比べて50%も短いことがわかりました。
また、米国ナッシュビルのバンダービルト大学リウマチ科内科教授・ピンカス博士の報告(1990年)では、30関節以上の多関節罷息の慢性関節リウマチの患者さん、
または日常生活遂行能(ADL)が、正常の80%以下の肢体不自由のリウマチの患者さんの五年生存率は、50%以下でした。
これは、心臓の冠動脈三本全部が侵された冠不全、またはステージ4(末期)のポジキン病(悪性リンパ腫の一種)の五年生存率と同じということです。
以上述べた四つの苦しみのどの一つをとっても、それだけでじゅうぶんに難病とよべるものです。
もちろん、慢性関節リウマチの患者さんの全てがこのような苦しみを背負い、最終的に卓いすや寝たきりの「重度身障リウマチ」への道をたどるわけではありません。
しかし、
「発病早期から多数の関節が腫れ、血沈やCRPなどで表される炎症のはげしさの程度が高く、日常生活動作上の障害や困難が急速に進行してくる」
ような患者さんの場合、病気の「たち」が悪く、治療に抵抗性で肢体不自由が急速に進行しやすく、重症化のコースをたどることがじゅうぶんに予想されます。
そこで、発病のできるだけ早い時期から徹底した治療をはじめることが、なににも増して強く望まれます。
健康な人でも、年をとればだれでも「寝たきり」の肢体不自由になってしまう可能性はあるわけです。
ですから、リウマチのように、関節や骨や筋肉などの運動器が侵される病気の場合、
人よりも早く「寝たきり」の「肢体不自由」になってしまう危険性が高いことを十分に認識しておかなければなりません。
さらに、その「予防と対策」についても、病気の早い時期から患者さんと医療側とが協力して、十分に配慮していかねばなりません。
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